事例紹介 詳細

【事例3】 受診拒否、初回受診への関わり Cさんの事例

60代女性 統合失調症(妄想型)

 

訪問看護開始までの経過

近隣住民より、Cさんが夜になると窓から大声で隣人の悪口をいっていると保健所に苦情がありました。保健師が訪問しCさんの対応にあたりました。

この一件以来、Cさんは毎日のように保健所に通い、保健師に不安なことなどを話しされるようになりました。保健師が病院の受診を勧めるものの、「心配してくれるのはうれしいが、大丈夫」とやんわり拒否されていました。

保健師より受診を勧めてほしいという依頼で訪問看護を開始しました。

看護師より、心の病気について話をしたり、薬の有効性について説明をされても受診にはつながりませんでした。初回訪問から数か月後、往診であれば話をしてもよいということになり、往診の先生に来ていただきました。

本人はうつむいたまま黙っていました。後で本人から「何を話していいか分からなかった」「緊張して頭が真っ白だった」と聞きました。病状や経過については、本人の了解を得て看護師から医師に説明しました。往診の先生も支持的に接して頂き、本人も少し安心した様子でした。先生から薬の説明を聴き、本人も納得したうえで服薬が開始されました。

その後、Cさんは夜間に大声を出すことはなくなりました。その後しばらくして、訪問看護師に対し「往診に来てくれた先生に相談したいことがある」と話されたため、精神科クリニックを受診する運びとなりました。

*Cさんと訪問看護師との間で十分な信頼関係が構築された時点で、「あなたが信頼してくれている私が信頼している人」として医師を紹介している。そして、Cさんが自身が医師の診察を望むまで、「待って」いる。こうして時間をかけて、徹底して「Cさんの苦しみを何とかしたい」という姿勢を示し続けたことでCさんが納得し受診に至っている。タイミングをみはからった適切な働きかけが重要である。