事例紹介 詳細

【事例3】 寝たきりの生活から脱却したFさん

娘さんと二人暮らしをしている89才のFさん。

5年前から腰痛が強くなり、1年前に手術目的で○○病院に入院されました。

手術は成功しましたが、歩行が出来なくなり、移動手段は車いすとなりました。

自宅は狭い上に段差が多く車いすでの移動はとても出来ない環境でした。

そのため、Fさんとご家族は退院後の生活に大きな不安を感じていました。

しかし、入院期間は定められており、早急に介護申請を行い手術後間もなく退院となりました。

ケアマネジャーはヘルパーサービスやポーダブルトイレなど、寝たきりでも生活が送れるようサービスを調整されました。

Fさんにとっては、住み慣れた自宅でありながら全く新しい生活のスタートでした。

 

退院時に医師からは「筋力を今以上に落とさないように」と言われており、デイサービスの利用を予定しておりました。

しかし、手術をして良くなったはずの腰痛が再燃してきました。

痛みの為に体を起こすことができず、車いすにも乗ることも困難でした。排泄もオムツ内になっていました。

病院で診察してもらうと、手術部には異常はなく、痛み止めが処方され様子を見ることになりました。

しかし、一向に痛みが治まりませんでした。

このままでは、褥瘡の発生や、認知症が進行するのではないかと、訪問でのリハビリテーションが開始となりました。

 

訪問での訓練では、硬くなった関節をほぐし、身体の機能回復に努めました。

また、腰痛が出ない起き上がり方を本人や家族、ヘルパーさんと協力しながら方法を模索しました。

ベッドの角度調整や起き上がりの手順、寝返りの方法などを決めていきました。

痛みの出ない起き上がり方が分かると、Fさんは自発的に起きるようになりました。

しかし、座っていると腰痛が強くなるため、食事の間も座っていられませんでした。

退院後2週間が過ぎた頃、仙骨部に褥瘡ができてしまいました。

ベッドマットレスをエアーマットに変更し、医師の往診と褥瘡処置の訪問看護も開始しました。

エアーマットレスは褥瘡には効果的ですが、座ることには適していません。

Fさんは自分で座ることができなくなってしまいました。

 

しかし、Fさんはあきらめませんでした。ご家族も訓練に協力してくれました。

週二回の訪問訓練と、作業療法士が作成した自主訓練を根気よく続けられました。

主な訓練内容は腰痛を生じないように、ベッド上での単純反復のとても地味な運動でした。

退院から3ヶ月が過ぎた頃、固まっていた関節がほぐれ、筋力も改善してきました。

筋力の回復に伴い腰痛は緩和し、エアーマットの上でも安定して座れるようになってきました。

褥瘡も完治したため、エアーマットから普通のマットレスに戻しました。

その頃から、ぐんぐん見違えるように良くなっていきました。

食事の間も腰痛なく座れるようになり、車いすに移れるようになり、デイサービスの利用も開始し、歩行器で歩けるようになり、現在では、伝い歩行で自宅のトイレを使用できるようにまでなりました。

Point

・寝たきりでもあきらめず、出来ることをコツコツすることで廃用を改善できる

・本人のやる気、ご家族の理解が訓練効果を最大にする