事例紹介 詳細
【事例2】 トイレでの失敗が減ったEさん
定年前に脳梗塞を発症し、車いすの生活となりました。
二人暮らしの妻に身の回りの世話を全部任せています。
しかし、排泄に関しては羞恥心があるのか妻に言わずにトイレに行かれます。
しかし、脳梗塞の影響があり、うまく動作が出来ずにトイレを汚してしまったり、間に合わなかったりと失敗が続きました。
妻はそのことが一番の負担だったようです。
Eさんは病気をしなければ現役で仕事をされている年齢です。
特にEさんは自尊心が強く、他人のアドバイスも素直に受け入れられない様子でした。
訪問した作業療法士との関係も「俺が雇ってやっているんだ」との思いが前面にあり、訓練に対して受け身で協力的ではありませんでした。
作業療法士は妻の介護負担の軽減を考え、トイレ動作の評価を試みたことがありました。
Eさんは「なんでそんなことをするんだ」「トイレは出来ている」と興奮して怒ります。
妻もEさんをあまり怒らせたくないと言われます。
その後、トイレについては本人の前では話題に出しませんでした。
その後、しばらくしてEさんが訓練中にトイレに行きたいと言われました。
トイレまで作業療法士も同行し様子を見させてもらうことができました。
その時、ようやくEさんがトイレで失敗する原因が分かりました。
Eさんは車いすからトイレに座る動作の際、反対周りで移乗していたのです。
右手で車いすのアームレストに手を付き、立ち上がり、270度右回りで便座に座っていました。
病院では縦手すりを使用した90度左回りの移乗練習をしているはずでした。
しかし、実際場面では練習が活かされていなかったのです。
作業療法士はその場で、「縦手すりの方がやりやすいですよ」と声掛けをしました。
Eさんは、声をかけられるままに縦手すりを持って立ち上がり、いつもより早く便座に移乗することができました。
その一回の成功体験は、その後のトイレでの失敗を格段に少なくし、妻の負担を減らすことができました。
Point
・実際場面での成功体験がその後の行動変容をもたらす
・自尊心を傷つけないよう最大限に配慮する